立川志の輔@京都造形芸術大学・春秋座


  • 一部
    • 「猿後家」

客席には赤い提灯がいくつも釣り下がっている。能舞台の松を背景に、志の輔さんは下手の左側から、紺の羽織と着物という格好で登場。話し始めるとわりとすぐに羽織を脱がはるんやけど、紐を解いて羽織を後ろへ引いてするりと脱ぐ姿がきれいだね。

2020年の東京オリンピックが今日決まった話から始まり、春秋座の良いところ(二階席までの800人ほど。通路もゆったりして、どの席からも見やすい)などの世間話が続く。「落語なんてのぁ、お客さんが自分で会場まで来て自分で噺聞いて自分で想像してってんだから、こんな楽な芸能でいいのかななんて思いますけどね、それに落語は日本語だからこそできる芸能なんですよ、言葉が豊富でしょ」という流れから、小噺が始まる。「姐さん、粋だね! いや、帰りだよ」 短くわかりやすくおもしろい小噺がいくつか続くと、場がぱっと切り替わったように落語の世界に入っていった。古い言葉は少なく、使うとしても解説をしっかりと加えながら、わかりやすく話していく志の輔さん。「日本語と言えば、ロケット発射が失敗したのは、数え方が悪い、三、二、一、と来て、次がゼロじゃロケットもびっくりしますよ。あとはね、日本に入ってきた言葉もあれば、使われなくなった言葉もありますよね、例えば後家さんというのは…」という説明から、猿後家が始まる。

下げを知っている噺を聞くのは初めて。愉快で楽しいというより、こう演出するんだななんて思いながら聞いていく。最後は楊貴妃だよなと思ってたけど、ただの猿知恵でございます、という下げ。へえ、こういう終わりもあるのね。

    • 出囃子

志の輔さん退場のあと、松の絵が下がり、お囃子の女性5人が小さな舞台に乗って中央へ滑り出てくる。三味線や太鼓、笛の出囃子をしばし聴く。

舞台背景は暗くなり、スモークと照明で白い揺らめきが作り出される。志の輔さん、今度は黒の紋入りの着物に羽織。客席は暗く、後方から舞台へのスポットライトが志の輔さんを浮かび上がらせる。

豊臣秀吉の天下の元、角倉了以高瀬川を開削した。鴨川の西に平行して走る高野川は、竹田で鴨川を横切り、その後に宇治川に合流する。この川を使って、島流しにされる罪人が大阪まで運ばれていった。舟に乗るのは、罪人とその親族、同心、そして船頭。

どんな噺なのだろうと思いながら、その世界に入っていく。(途中で携帯電話のメロディがなるアクシデントあり)

噺が終わり、一言説明が入る。「森鴎外高瀬川、読み切りでございました」

一人芝居とも朗読とも違う、落語でのお話。芥川の羅生門のように結末をはっきりと示す(あくまで暗示の域だけど)のではなく、あなたはどう思いますかという余地の広い終わり方だったな。

紺の着物に茶鼠の袴。町人で大工の八五郎は大のお調子者。屋敷へ召し抱えられた妹がお世継ぎを産み、殿様からお呼びがかかったので出かけていくというお話。ふるまわれたお酒をぐびりぐびりと呑み、酔いが増して、わざとなのか酔いのせいか、心情をぽろりぽろりと話す姿を演じるのは、愉快と人情物

    • アンコール

文明で失うものがある、携帯電話ができれば、噺の途中で鳴るのは、「残念だけど仕方ない」。うまく楽しくまとめてはりました。
四十七都道府県の県庁所在地のほぼすべてを、毎年まわるけれど、そこここでお客さんの反応が違う、それが楽しみで廻ってるんですよ、との事。
15分の休憩を入れて、2時間半の高座。楽しませていただきました。