大友良英「アンサンブルズ2010―共振」@水戸芸術館

 
水戸芸術館へ初めて行ってきました。設計は磯崎新。ぽこぽこした塔が印象的。夕闇の中で淡く光ると、浮遊感があるね。

見たかったのは、大友良英の展示。新しい感覚を知ることができて、とてもよかった。

美術館や映画やライブに行くとき、あまり中身を知らないで行くのが好き。初めて知るときのあの気持ちは、特別だから、ネットで知ってしまうのは、もったいないと思う。なんとなくおもしろそうだから行ってみよう、行ってみたら格好よくて心を持っていかれた、だからもう少し調べてみよう、というのが私の理想。

今回の展示は、例えば、部屋の中にドラムが何十個かばらばらと置かれている。線でつながっていて、ときどきどこかのドラムが音を鳴らす。その偶発性、時間と空間と音色の偶発性が重なって、素敵な音空間を作る。それが、ターンテーブルになったり、ギターだったり、テープから引き出されたリボンがごちゃごちゃと積み上がっていたり。

いろんな人が聞いて心地が良い音、それはたしかに音楽だけど、でも、音楽の始まりは、こうやって偶然鳴った音を聞いて、気持ちがいいと感じる心があったこと。

前に、物干竿にかかった金属製のハンガーが軽くぶつかって、シャリンシャリンと鳴っているのを、いい音だねと言った人がいた。あ、この人の感覚、音楽に通じるなと思ったよ。自分でギターを弾く人。自分で鳴らすのだけがいい音ではないんよね。たしかに、風の音や海の音をいい音だなと思って、それが音楽につながったりはするよね。それと同じで、ハンガーの音みたいな人工的なでも偶発性のある音をいい音だなと思って、それが音楽につながるのも楽しいことだね。

そして、さすが大友良英、と思ったのは、その偶発性が単に気持ちいいというレベルを超えて、快感だったこと。顔がほころんだ。素晴らしい展示。



関連イベントで、近くのカフェにて、小さなピアノの調律をさせてもらえた。
みんなが調律してるから、音の階段がすでになくなっていた。12音階なんてさっぱりない。でも、そもそも12音階は、人間が自然の音から拾いだしたもので、それ以外の音もいっぱいあるんよね。そんな広い音のh範囲から、自分の好きな音の重なりを見つけるのが楽しかった。
それにしても、ハンマーでボルトをちょっとだけ動かすのって、思っている以上に大変。繊細な作業やね。