「Glenn Gould 天才ピアニストの愛と孤独」@京都シネマ

僕にはグールドの日常が特に変わってるようには思えない。
演奏のことが第一なら、常に身体は冷やしたくないし、
各会場でピアノが変わるのだから、せめて椅子くらい気にしたいだろう。
音楽に関係のない華やかなパーティーなど楽しくなかっただろうし、
人里離れた場所からでしか見えない穏やかな世界があることをきちんと知っていた、
まっとうな職人で、とても愛らしい人だったと思う。
それぞれの人の歴史は、それぞれに面白いもの。
世間の「普通」なんて、皆それぞれ何かしら逸脱してるものだろう。
自分自身が、一体、何を「よし」として生きているのか、見つめ直せる映画だと思います。

高木正勝
(音楽家、映像作家)

Gouldの暮らしを、彼を愛した女の人たちの視点で綴る映画。若い頃はピアノにのめり込み、真夜中に自宅でトランス状態になって弾き続けていた。その後、時代の寵児となる。でも、穏やかな暮らしを望む彼は、コンサート活動から引退する。緑に囲まれた家で、恋愛して、家族ができそうで、でも偏執的なことで孤立していく。ラジオ番組をつくり、録音技術を突き詰めていく。

指をぽんぽんと上げる演奏方法は、彼の先生が教えたもの。先生のお弟子さんは皆同じように弾くけど、グールドは別格だったそう。

好きなピアノに、夢中になって没頭する人生だったんだな。彼は好きなものに素直で、でもその一部は他の人に理解されなかった。好きなものと人との関係、どちらを大事にするか、人は選ぶ/選べるわけじゃないのかもしれない。でも、彼の音楽は輝いている。そういう人生だったんだ。