「蜘蛛巣城」@京都文化博物館

蜘蛛巣城<普及版> [DVD]

蜘蛛巣城<普及版> [DVD]

監督・黒澤明
出演・三船敏郎山田五十鈴志村喬

シェークスピアの"マクベス"を下敷きに、能の様式で表現した映画。

開幕がすばらしい。毛筆の大きな文字。横笛の甲高い響きが、和太鼓の低音の上に広がる。笛の音程は、十二音階に限らず、わずか上やわずか下を動いていく。西洋音楽の転調による緊張感のように、心が持ち上げられる。邦楽のリズムや音程が響く体を持ってるのが、日本の人、日本の暮らしなんかな。

セリフは聞き取りにくいが、時折耳に入る言葉から、状況が見えてくる。

森の中での霧のシーン。馬をあやつる二人が、城をめざして彷徨う。幽玄の世界。モノクロの世界で、霧、馬上の二人の影。絵になる。

そそのかす妻、葛藤する夫。妻の声音がおそろしい。

歩く足元や身のこなしなどの体の動き、衣ずれや馬の足音などの音。顔の表情やセリフ以外で、人の心の動きが見えてくる。能舞台の背景画や立ち位置など、能の様式が見事に使われている。

ていねいな絵作り。頭に描くシーンを、実際のものにする。想像をつきつめ、綿密に計画し、時間をかけて実際に作り上げる。気が遠くなるほどのセンスと努力。